シリーズ 人生に役立つ二宮金次郎の教え(その20)
幸田露伴 原作 “二宮尊徳翁”を一緒に読んでみませんか(その1)
世の中には、たくさんの書籍がありますが、人々に大きな影響をもたらしたにもかかわらず、いつのまにか埋もれてしまった名著というものがあります。明治の文豪、幸田露伴が著した“二宮尊徳翁”もその一つだと感じています。
“二宮尊徳翁”は、二宮金次郎を尊敬していた幸田露伴が、少年少女向けに書いた二宮金次郎の伝記です。この本は、多くの日本人が二宮金次郎の存在を知り、共通のイメージを持つきっかけをつくりました。なお、日本中の小学校に設置されている二宮金次郎像は、この本に描かれた、狩野派の小林永興のイラストがモチーフになったといわれています。
明治時代の言葉(文語体)で書かれているため、現代のわれわれには読みにくいところがありますが、二宮金次郎の生き様を研究する上では読む価値が十分あると思います。そこで、これから私のつたない現代語訳を載せながら、二宮金次郎の生き様を時系列的に、体系的に、内容をお届けできたらと思います。こういった伝記を、後世に残してくださった幸田露伴先生に心から敬意を表すものです。
原文:いたづらに起き徒に眠り空しく食ひ空しく衣て何事も為す無きは 禽獣に余り遠からぬ人なれば 尊ぶにたらずといふべし、学んで知を蓄へる人は稍尊ぶへし、勤めて業を成せる人は又稍尊ぶべし、志して道を求むる人は愈々尊ぶべし、誠有りて徳をほどこせる人は又愈々尊ぶべし。二宮尊徳先生と崇め称へられて今も尚数多の人々に神のごとく尊ばるる近世の君子とも豪傑とも申すべき人ありけり
現代語訳:何もせずにただ起きて、ただ眠り、何の目的もなく食べて、着るだけの生活をしている人は、動物とあまり変わらないと言えるでしょう。そうした人は、尊敬に値しません。一方で、学びによって知識を身につける人は、少し尊敬されるべきです。労働によって仕事を成し遂げる人も、また尊敬されるべきです。志を持ち、正しい道を求めて努力する人は、さらに尊敬されるべきです。そして、誠実な心を持ち、人々に徳を施す人は、最も尊敬されるべき存在です。二宮尊徳先生は、まさにそのような人物であり、今でも多くの人々から神のように敬われています。先生は、近代の日本において、立派な人格者(君子)であり、すぐれた行動力を持つ人物(豪傑)として称えられるべき人です。
おぜき重太郎のコメント:二宮尊徳先生の境地に達するには、並大抵のことではなく、私などは爪の垢を煎じて飲む程度です。ただ、心構えとしては、仕事や勉強は単にやれば良い訳ではなく、真心を持って勤め、でしゃばりな自分の気持ちを抑え、公共に対する奉仕の精神を忘れず、活動が出来たらと思っています。
(議会レポート2025年5月号(広域版)より 執筆者:おぜき重太郎)