二宮尊徳(金次郎)の研究(その1)

~現代に通用する二宮尊徳の教えを研究する~

突然、二宮金次郎で有名な二宮尊徳の話が出て驚く方もいらっしゃると思いますが、実は、二宮尊徳の生き様に現代社会へのメッセージを乗せたオペラに関わることになりました。
二宮尊徳といえば、薪を背負って書を読んでいる「二宮金次郎像」が有名ですが、具体的に何をした人物なのか詳しく答えられる方は少ないのではないでしょうか。
相模国は小田原藩の栢山(かやま)村で富農の家に生まれた金次郎ですが、近くにある酒匂(さかわ)川の堤防決壊によって金次郎の運命は急変します。大半の田畑は濁流にのまれ、父・利右衛門の病気も重なり二宮家は次第に没落。その後、長く床に臥せっていた父は病死。貧農にまで落ちぶれてしまいます。それだけでも十分、悲劇なのですが、その上さらに、母・よしを失い、追い打ちをかけるように酒匂川が再度、氾濫。まさに悪夢と悲劇が絵に描いたように連続で金次郎一家を襲います。最終的に、弟たちとも離れ離れとなり一家は離散してしまいました。
そのような、およそ常人には耐えられないような逆境においても、金次郎は決して諦めることはありませんでした。類まれな勤勉さや知恵と工夫をもとに二宮家だけでなく600以上ともいわれる荒れ果てた農村を再興したと言われています。そこに、地味かもしれませんが現代まで多くの人を惹きつける感動と魅力を感じます。
実際に、報徳仕法と呼ばれる二宮尊徳の教えは現代社会にも十分通じる改革の思想だと言われています。「至誠」「勤労」「分度」「推譲」「積小為大」「一円融合」。渋沢栄一や豊田佐吉、土光敏夫や稲盛和夫といった財界の大物をも惹きつける教え。これらは現代の政治の分野にも十分通づるものがあるのではないでしょうか。その教えをこれから追い求めていきたいと思います。(つづく)

二宮金次郎像

(町声レポート2024年10月号より 執筆者:おぜき重太郎)