シリーズ 人生に役立つ二宮金次郎の教え (その14)
民の生活を思いやることの大切さ:二宮翁夜話 巻の4-136より
二宮尊徳翁はこう言いました。
「一般的に、田畑が荒れるのは怠けた農民のせいだとされ、人口が減るのは子供を育てない悪習のせいだとされるのが普通の論ですが、どんなに愚かな民であっても、わざわざ田畑を荒らして自ら困窮を招く者がいるでしょうか。人は禽獣(きんじゅう)ではなく、親子の情がないわけではありません。それなのに子供を育てないのは、食べ物が乏しくて育てることが難しいからです。その事情をよく察すれば、これほど憐れむべきことはありません。
その原因は、重い税に耐えられず田畑を捨てて作らないこと、民政が行き届かず堤防や溝渠(こうきょ)や道橋が破壊されて耕作が難しいこと、博打が盛んに行われ風俗が頽廃(たいはい)し、人心が失われ耕作しないことの三つです。
耕作しないために食物が減り、食物が減るために人口が減るのです。食物があれば民は集まり、食物がなければ民は散ります。古い言葉に『重んずるべきは民の食と葬祭』とあり、特に重んずべきは民の米櫃(こめびつ)です。聖人の言葉にも『食を足す』とあり、重んずべきは人民の米櫃です。あなたたちもまた、自分の米櫃の大切さを忘れてはいけません」(一部抜粋・意訳:おぜき重太郎)
2024年は、物価高騰により、市民生活が非常に圧迫された一年でした。10月に衆議院選挙があり、「手取りを増やす」といったキャッチフレーズが国民の心を捉えたことは記憶に新しいです。
二宮金次郎が民の生活について、どのように考えていたのか興味を持ち調べていましたが 金次郎先生が「重んずべきは民の米櫃だ」と喝破していることに、なにより重みを感じています。
まずはしっかりと食べて、普段通りの生活を送ることができる。これが何より大切なのは言うまでもありません。民の負担を軽減し、働いた分だけ米櫃が満たされる報われる社会を今の政治は目指して行くべきと思います。
(町声レポート2024年11月号より 執筆者:町田市議会議員 おぜき重太郎)