シリーズ 人生に役立つ二宮金次郎の教え(その19)
天の道と人の道、譲ること(推譲)の大切さ
田んぼや畑を放っておくと、草はぼうぼうとなり、畔は崩れ、最終的には荒れ地になってしまいます。これらの変化は、太陽の運行や季節の移ろいによるもので、人にはどうしようもありません。二宮金次郎はこれを天の道と呼んでいます。一方で、人は生活を営むために、雨風を防ぐために家を建て、草を取ったり、土を盛って水を引き、耕作をします。人が人として生きるには天の道に逆らう要素があるのです。二宮金次郎は、このことをふまえて、天の道と人の道は別のものであり、その調和が大切だと教えています。
さて今月は「人道は譲りにあり」という、二宮金次郎がもっとも大切にしている、譲ることの大切さについて少しお話したいと思います。私たちは、さまざまな仕事をして生活を送っています。いま申し上げたように、自然に任せただけでは生きていけませんので、自分の勤めを毎日励んで、しかもそれを継続していかなければなりません。生きるというのは大変なことですね。
勤めをを長い年月続けると、何らかの富・余剰が生まれます。その蓄えを将来の自分や、家族や子孫、可能であれば、社会や、国など、に譲ることができたら世の中はよりよくなります。二宮金次郎は、この譲りの精神が世の中に広がることを心から願っていました。
推譲はとても大切な考え方ですが、譲る側も譲られる側も、謙虚な姿勢でいることが大切ですね。自分のお役目というのが必ずあると思いますので、受けたご恩はお返しし、恩を送り、感謝の気持ちで、(自分の出来る範囲で)推譲社会を実現させていきたいものです。
(町声レポート2024年4月号より 執筆者:おぜき重太郎)