町田の無電柱化の可能性を探る(その1)
電柱が邪魔という、率直なご意見をいただく!
「あの電柱が邪魔で邪魔で。なんとかならないの?」そういったご要望をいただいたことがあります。ご指摘の道路は幅3m弱。車の相互通行はできず、車と人のすれ違いにも気を遣う道路です。道路の片側には住宅が、もう片側には里山が広がっています。この電柱は、里山側に道路から30㎝ほど離れた場所に建っていました。解決策として電柱の移設を検討しましたが、電柱移設の受け入れ先が見つからず断念。要望者には移設が困難であることをご説明しました。
90%以上の方が「電柱・電線がなければよかった」
町田市のお隣の横浜市では「無電柱化」についてアンケート※1を実施しました。結果は、左の図の通りです。このアンケートには、この他にも無電柱化を進める理由として「歩行者やベビーカー・車いす利用者の通行の妨げになる」といった声が72.4%。「自動車同士のすれ違いにも苦労する場所が多く、困っている」といった声も寄せられていました。
電柱は、電気や通信を私たちの暮らしの隅々まで届けてくれる、大切なインフラです。邪魔者扱いしてしまうのは、可哀そうともいえますが、横浜市民の皆様が感じられるように電柱が無ければ通行がスッキリするのは間違いありません。
※1 出典:横浜市「令和5年度第15回ヨコハマeアンケート」https://www.city.yokohama.lg.jp/city-info/koho-kocho/kocho/e_anke-to/kekka/R05kekka.files/0115_20240312.pdf
無電柱化のメリット。それは防災・安全快適・景観
無電柱化とは、私たちの生活を支える電力線や通信線を地下に埋めて電柱を無くすことです。一般的にいわれている無電柱化のメリットは、①防災、②安全快適、③景観です。例えば、大地震が発生して電柱が倒されてしまうと、道路が寸断され、必要物資や救助隊が到着できません。そのため、災害時に重要な役目を果たす緊急輸送道路については新しい電柱を立てることが禁止されました。その他にも、電柱が無くなることで、道路の有効幅が広がり死角もなくスッキリと通行することができます。さらに、例えば、景勝地の写真を撮るときに、なるべく電柱や電線が入らないように撮ることはありませんか?無電柱化することによって、観光スポットをより美しく見せることができます。
※2 出典:国土交通省 無電柱化の目的と効果 https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/mokuteki_02.htm
町田市の無電柱化率は約1%。海外では100%の都市も
メリットがある無電柱化です。国や東京都はもちろん無電柱化を推進しています。しかし、町田市の現在の無電柱化の進み具合は、約1%です。1,284㎞もある市道の内、12㎞ほどしか無電柱化が進んでいません。それに比べ、パリやロンドンは無電柱化率が100%といわれており、無電柱化が進んでいる海外都市はたくさんあります。
なぜ、日本では無電柱化が進まないのでしょうか。理由はさまざまありますが、要因の一つにコストが高いことが挙げられます。無電柱化の工事には、1㎞あたり5.3億円かかるといわれています。町田市の市道の1%で12.84㎞。1%無電柱化すると、単純計算で約68億円かかる計算です。町田市の道路予算は2025年度は約77億円ですから、無電柱化はとてもお金がかかる事業であることが想像できます。
※3 出典:国土交通省 無電柱化の整備状況)https://www.mlit.go.jp/road/road/traffic/chicyuka/chi_13_01.html
町田市には町田市無電柱化推進計画が。応援します!
現在の町田市ですが、町田市無電柱化計画を作成し、9つの路線と1つの区域(約5.3㎞)を無電柱化の優先整備路線として、2025年度までに着手することを目標にしています。この路線には長らく声を上げていた相原駅東口アクセス路も盛り込まれています!歩みが遅いと言うご指摘もあろうかと思いますが、計画が着実に進めたく、私自身、この計画を応援して参ります。
海外は電線類を地中に直接埋める直接埋設方式であるためコストが低く抑えられているといわれています。本来であればロンドンやパリなど現地を視察し、道路政策担当者や現場の声を聞きたいところです。しかし、今の段階でそれは難しいので、手始めに日本国内にいる無電柱化の有識者にお話を伺う機会を設けながら、コスト削減の方法がないか研究してみたいと考えています。新しい学びの結果がありましたら、その都度、報告・共有させていただきます。
(議会レポート2025年4月号より 執筆者:おぜき重太郎)