なぜ里山が大切なの? 町田の里山の保全と活用

~小山田エリアには、里山を守り、活用するための拠点が~

里山は、はるか昔の時代から、私たち日本人の生活を守り支えてくれた場所です。里山に入れば、きのこや山菜、根菜、果物といった食べ物が季節に応じて採れます。また、里山に生えた樹木は、薪や炭として暖を取りお湯を沸かすための燃料になり、さらに家を建てる木材も提供してくれました。
里山は、人が自然に手を入れて来た場所なので、原生的な自然とは異なります。
一言に自然と言っても、“里山”と“原生的な自然”は異なるものなんですね!しかし、人が手を入れた里山だからこそ繁殖する生き物もおり(例えばチヨウ)、里山が管理・維持されなければ生物多様性が損なわれると言われてます。また、昨年、町田市相原町でもクマが出没したことが話題になりましたが、人と動物を分ける緩衝地帯にもなって来ました。
そのような日本の里山は、国土(3,780万ha)の約20%(770万ha)を占めています。とてつもない広さですね。その里山の保全がいま課題となっています。

【参考:里山の歴史】
縄文時代: すでにクリなどの栽培を通じて里山の利用されていました(青森県 三内丸山遺跡)。
弥生時代: 稲作が普及し、農地としての里山の利用が進みました。里山は食料を得るうえで重要な場所でした。
古代から中世: 都市の発展とともに、里山は建材や燃料の供給源として重要性を増します。森林の乱伐が問題となり、保護政策が取られることもありました。
江戸時代: 森林需要の増加に歯止めがかからず全国的に森林の荒廃(はげ山・洪水など)が進みました。そのため江戸幕府は森林保護政策をとるようになり、里山においても持続可能な利用が意識され、村ごとに利用規則が設けられました。
近代から現代: 明治維新後や第二次世界大戦前後も、森林の乱伐が問題になることもありました。その後、昭和30年代には化石燃料の普及や農業の機械化が進み、里山の経済的価値が低下していきます。そのため多くの里山が放置されるようになり、里山が荒れることになりました。

【なぜ、里山の保全が大切なの?】
近年、里山の生態系や文化的価値が再評価され、保全活動が進められています。なぜ里山の保全が必要なのでしょうか。そのポイントをまとめました。
生物多様性の保全: 里山は多様な生物の生息地です。適度な人間の管理が行われることで、豊かな生態系が維持されます。
自然資源の供給: 里山は食料や木材などの自然資源を提供します。
文化と景観の維持: 里山には地域の文化や風土、景観を形作る役割があり、地域の歴史や文化が保存されます。
環境保全: 里山には水源の保護や土壌の浸食防止など、環境保全の役割があり、自然災害のリスクが軽減されます。
人と自然の共生: 里山は人と自然が共生する場です。野生動物の生息地が保護され、人間の生活圏とのバランスが保たれます。

小野路町 奈良ばい谷戸 における里山保全活動の様子です。水田の再生や樹林地の整備そして収穫までの農業年間行事を通して、地域の歴史や環境を学習しながら、市民の手による農的環境の保全・管理を行っています。(町田市HPより)

小野路町 奈良ばい谷戸 における里山保全活動の様子です。水田の再生や樹林地の整備そして収穫までの農業年間行事を通して、地域の歴史や環境を学習しながら、市民の手による農的環境の保全・管理を行っています。(町田市HPより)

【町田市が進める“新しい里山づくり”】
話を町田市に戻します。町田には4つの里山エリアがあることをご存知でしょうか?答えは、 相原エリア、小山田エリア、小野路エリア、三輪エリアの4つです。
町田市は「町田市里山環境活用保全計画」という計画をつくり、これら4つのエリアで「新しい里山づくり」を推進しようとしています。新しい里山づくりの基本方針は以下の通りです。

基本方針1 里山の環境を整える (山林・農地の再生、人が関わるしくみづくり)
基本方針2 里山の魅力を伝える (里山の魅力を周知する)
基本方針3 里山を体感する (現地に訪れる人を増やす)
基本方針4 里山ではじめる (里山でチャレンジする人の後押し、 人的交流促進)

小山田エリアでは、この「新しい里山づくり」の一環として、拠点となる施設を整備することになっています。

町田市小山田エリアの場所をあらわす地図です。

【どんな拠点?小山田エリアでは市民の皆さまとワークショップ】
 小山田エリアでは、里山の活用について、地域の皆さまと断続的にワークショップや意見交換会を開催しています。下は、里山環境の活用拠点施設についてワークショップ で出た意見をまとめたものです。
町田市は、これらワークショップの結果を踏まえて、小山田エリアにおいて「里山環境活用の拠点づくり」を進めて行く方針です。2025年3月までに「小山田エリアのどこに、どのような手法で、どのような運営形態にするのか」方向性をとりまとめるとしています。運営に関しては民間事業者が運営等を担う民間活力の導入が検討されています。

ワークショップで出た意見をまとめたもの↓
1. 拠点施設の役割

①地域住民の憩いの場
ちょっとした買い物ができる場所
②地域の賑わいや
交流の創出につながる場所
2. 拠点施設の機能
①飲食や休憩ができるカフェ
②地域案内や情報発信のコーナー
③木工体験などができる工房
④商品の開発や地場産品の販売
3. 整備に適した場所
①里山に近い道路沿い

町田市が参考にしている鴨川市の総合交流ターミナル「里のMUJI みんなみの里」(鴨川市HPより)

町田市が参考にしている鴨川市の総合交流ターミナル「里のMUJI みんなみの里」(鴨川市HPより)

おぜき重太郎
 全国的に里山の荒廃が懸念されている中で、地域の里山保全につながる動きはとても有難いことです。①里山に関わる人を増やす ②山林や農地などの里山資源の活用を推進する ③子どもから大人まで幅広い世代に里山の学びの機会を提供する、といった地域の活性化がカタチになるよう応援して参ります。

(町声レポート2024年9月号より 執筆者:町田市議会議員 おぜき重太郎)