~町田市でも実現できないかの調査・研究~
塾や習い事に、お子さんが「通いたい!」、あるいは保護者の気持ちとして「習わせたい」そのような気持ちを持たれている方はたくさんいらっしゃると思います。少し古いデータですが、文部科学省の平成20年8月の「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」では、学校外での何らかの学習活動(学習塾、家庭教師、通信添削、ならいごと)の実施状況は、小中全体を通じて、各学年とも 概ね80%前後なのだそうです。
文部科学省の平成20年8月の「子どもの学校外での学習活動に関する実態調査報告」より
一方で、言うまでもなく、学習塾や習い事に通う(通わせる)ためにはお金がかかります。実際にどれくらい負担がかかるかについて、文部科学省が公表している子供の学習費調査(令和3年度)が参考になります。例えば中学生の平均を見ると、塾や習い事といった学校外活動費の年額平均は約36万8千円となっています。これは、月3万円以上の負担が発生しているということで、改めて子育て世帯の負担の大きいことが分かります。
~大阪市の塾代助成事業とは~
そのような中、大阪市には塾代を助成する制度があります。子育て世帯の経済的負担を軽減するとともに、子どもたちの学力や学習意欲、個性や才能を伸ばす機会を提供するため、一定の所得要件を設け、市内在住中学生※の約5割を対象として学習塾や家庭教師、文化・スポーツ教室等の学校外教育にかかる費用を月額1万円を上限に助成する事業です。
以下3点がポイントです。
①学校外教育に対して月額1万円を助成していること
②所得制限を設けていること
③市内在住の中学生の約5割を対象にしていること
また、助成したお金が適正に使われるよう現金でなく塾代助成カードで支給していることも特徴です。
~大阪市の塾代助成事業を検証~
家計にやさしく、魅力的な塾代助成制度のため、町田市で実現することに向けていくつか要点を絞って確認や検証をしました。
(1)所得制限について 児童手当をはじめ、多くの子育て支援制度には一定の所得制限が設けられています。その線引きによって助成を受けることが出来る・出来ないが決まってしまうため、不公平という声があり、さまざまな制度で所得制限撤廃を目指す動きが広がっているように感じます。
なお、この大阪市の塾代助成に関して、大阪維新の会の公約の一つに塾代助成の所得制限撤廃があるそうです。
重太郎:限られた財源の中で、所得制限を設けざるを得なかった事情もあったかもしれませんが、継続して不公平感を無くす取り組みが必要だと思います。
(2)利用率について 大阪市において中学生の生徒数は約5万1千人です。その内、塾代助成事業における想定助成対象者数は令和2年度で29,540名ですから、中学生の約6割が助成対象者になっていることになります。そして、利用率に関しては令和2年度に1か月以上カードの利用があった生徒数 17,273 人(想定助成対象者の中での利用率 58.5%)とのことでした。
(3)塾代助成事業の予算について お金が無ければ助成事業を行うことは出来ません。そこで大阪市役所のこども青年局 企画部 青少年課に問い合わせたところ、塾代助成事業の予算は大阪市の単費(独自財源)で20億3千万円とのことでした。
一般的にこういった子育て施策は国と地方(都道府県・市区町村)が分担して費用負担するものです。しかし、大阪市の塾代助成事業は大阪市単独で、しかも20億円(助成対象が小5から拡大すると約31億円)という大きな金額を確保しているということは驚くべきことだと思います。
重太郎:子育て支援の拡充はとても重要ですが、市の財源は限られています。実現のためには歳出改革の議論も必要です。
(4)町田市教育委員会の認識について 塾代助成事業を町田市でも導入できないか、重太郎は2016年3月議会で質問をしていました。なお、バウチャーとは使い道が限定された補助金のことで、教育バウチャー=塾代助成事業の意味で発言しています。
2016年というと議員生活2年目で、新人で議会質問に慣れていなかったと思いますが、なかなか冷たい答弁だと思います。
町田市教育委員会は事業費13億円と答弁していますが、確かにこれは町田市にとって非常に大きな金額です。一度に13億円はかなり厳しい、国や都の支援が無ければ難しい…教育委員会がそう判断するのは理解できます。しかし、所得制限について、批判もありますが、まず出来る範囲から塾代助成事業を検討して行く考えがあってもよいのではないでしょうか。
重太郎:東京都においても中学3年生や高校3年生などを対象に受験生チャレンジ支援貸付事業というものがあります。学習塾等受講料が20万円上限、無利子貸付で、高校や大学に入学した場合は返済免除となります。こちらも所得制限がありますが対象になる方はご活用いただけたらと思います。
(会報2023年1月号より 執筆者:おぜき重太郎)