“こうのとりのゆりかご”(赤ちゃんポスト)の視察

 こうのとりのゆりかご(いわゆる赤ちゃんポスト)とは、様々な事情で養育することができない赤ちゃんを、親が匿名で預けることができる施設です。日本では、熊本市にある慈恵病院1か所にのみ設置されています。
実は東京都内に赤ちゃんポストを設置する構想があります。10月26日に設置を検討している医療法人と超党派の区市議会議員で熊本市の慈恵病院を視察しました。

~熊本・慈恵病院での現状~

 熊本の慈恵病院では、平成19年から令和3年度末までの15年間に、161人の赤ちゃんを受け入れています。大半が生後1か月未満の新生児(133人)ですが、乳児や幼児のケースもあります。
母親に関して、半数以上の85人は自宅や車内で出産した、いわゆる“孤立出産”の状態であり、厳しい状態に置かれた女性が駆け込んできている現状があります。
また、預け入れをした理由(複数回答)は、生活困窮(18%)、未婚(12%)、世間体・戸籍(10%)、パートナーの問題(9%)、不倫(8%)、養育拒否(6%)など、理由はさまざまあるようです。さらに、どこの地方から来て、こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)に預け入れたかについては、熊本県内は13人でした。その他、熊本県を除く九州は39人、近畿15人、中部16人、関東25人、さらに北海道や東北からと非常に広範いから預け入れられている現状があるようです。
 他に、慈恵病院では令和3年度だけでも4,718件の妊娠に関する悩み相談を受けていましたが、その内2889件が熊本県外からの相談です。さまざまな理由で差し迫った状況にある妊婦が全国に存在していることが伺えます。

熊本市健康福祉局のこうのとりのゆりかご第5期検証報告

↑こちらから熊本市健康福祉局が発表したこうのとりのゆりかご第5期検証報告がご覧になれます。

~視察では、お人形の赤ちゃんで預け入れのデモンストレーションがありました~

 視察では、慈恵病院マリア館の脇にある小道から、お人形の赤ちゃんを抱えながらやって来て、こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)に赤ちゃんを預け入れて赤ちゃんを保護するまでのデモンストレーションが行われました。逡巡しながら入って来る親のことを想像すると目頭が熱くなりました。
ゆりかごに預けられた場合の慈恵病院での初期対応の流れ

~最後に、慈恵病院 蓮田院長との懇談がありました~

 視察の最後には慈恵病院の蓮田院長と懇談がありました。批判も多く受けるようですが、遺棄や殺人といった本当に痛ましい事件を防ぐために年間3,000万円の維持費を病院の持ち出し+ご寄付で運営を続けているとのことでした。
この日は、出勤予定の医師にお休みがあったようで、多忙の蓮田院長は途中で抜けられ、その後、視察の発起人である三次ゆりか江東区議を中心にマスコミ取材の質問にお答えしてこの視察は終了しました。
蓮田院長との面談
重太郎:こうのとりのゆりかご(赤ちゃんポスト)に関しては、賛否両論あり、子どもは親の責任でしっかり育てるべきという考えももちろん理解できます。
しかしその一方で、蓮田院長も仰ってましたが、親に障害があったり虐待を受けていた場合、育てられずに抱え込み、本当に悲惨な結末を迎えるケースもあるので、私自身は今までの児童相談所や子ども家庭支援センターに加え赤ちゃんポストの設置により救われる命があると考えます。
なお、東京の赤ちゃんポスト設置に関しては、江東区を想定しているようですが東京都や江東区といった行政機関との調整はこれからのようです。議員として行政機関の橋渡しに何らかの形で協力するとともに、市民の皆さまのご意見を丁寧に伺っていきたいと考えています。

(会報2022年10月号 執筆者:おぜき重太郎)