シリーズ 人生に役立つ二宮金次郎の教え (その9)

~金次郎さんが読んでいる本は、一体どんな本?~

 突然ですが、皆さんは二宮金次郎がどんな本を読んでいたかご存知でしょうか?例えば、小田原駅東口の二宮金次郎像。金次郎さんが手に持っている本には「一家仁 一國興仁(一家 仁なれば一国 仁に興り)…」といった漢文が刻まれています。身近なところでは玉川大学の教育博物館に収蔵されている二宮金次郎像にも同様の文字が刻まれています。

この漢文は、古くから東アジア全域で読まれた「大学」という本の一節です。金次郎さんは、子どものころ、この「大学」を読みながら薪を拾っていたと言われています。子どもが勉強しながら仕事をする姿は、江戸時代においても相当なインパクトがあったと思います。二宮金次郎像は、まさにその薪拾いの姿がモチーフとなったものです。

それでは、具体的にどのようなことが書かれているかといえば、現代語訳でいえば、「家の中が思いやりの心でいっぱいになれば、国全体も思いやりの心が盛んになり、家の中でお互い譲り合う気持ちを持つようになれば、国全体にも譲り合いの心が生じるようになるになる。逆に、一家が貧欲で、自分勝手なことばかりをするようになれば、その国は争いごとが絶えなくなる」といった意味だと理解しています。

金次郎さんは、荒れ果てた農村を立て直す使命を持っており、村を復興するには、まず人の心の復興「心田開発」が必要と考えていました。人の心の復興には仁の心(他人に対する親愛の気持ち)が大切で、人に仁の気持ちを芽生えさせるためには、の心(譲り合いの精神)が大切だと、そう考えてたのではないかと思います。

今の時代、改めて仁の心を見つめ直す必要があると思います。家の中がお互い譲り合いの精神を持つようになれば、家の中が仁の心で溢れるようになります。まずはここから実践することが大切なことですね。

二宮金次郎のイメージ画像です。

(町声レポート2024年6月号より 執筆者:おぜき重太郎)