シリーズ 人生に役立つ二宮金次郎の教え(その22)
~幸田露伴 原作 “二宮尊徳翁”を読む(その3)
諦めない一歩が未来をつくる~
◎【あらすじ】父との別れ、さらに深まる苦難(前回の続き)
尊徳先生は、貧しい暮らしの中で草鞋を作り、それを売って家計を助けるようになりました。わずかな収入で父に(当時、少量の酒は滋養強壮に良いとされていた)酒を勧める心遣いも忘れませんでした。
しかし、十四歳の時、頼りにしていた父が病に倒れ、ついに別れの時を迎えます。父を失ったことで生活はさらに困窮し、艱難はますます深まります。それでも、尊徳先生は、投げやりにならず、できることを一歩一歩積み重ねていきました。この時の忍耐と努力が、後の大成への布石となったのです。

困難な時こそ、一歩を積み重ねることが大切。尊徳先生の姿は、目標に向かって努力する勇気を教えてくれます。(画像は草鞋づくりのイメージです)
原文:先生其中に漸く長じて草鞋を作り其れを売り、量こそ一合といへば少けれど大いなる情は籠れる酒を求めて夜毎に父に侑められける。かくて先生わずか十四の年、頼みとしたる父とわかれ、貧苦弥増し艱難ますます極まりしかば
現代語訳:尊徳先生は、成長するにつれて草鞋を作り、それを売って、生活の足しにしました。わずかな収入で酒を買い、夜ごと父に勧めるという心遣いも見せました。しかし、十四歳の時、頼りにしていた父と死別し、生活はさらに苦しくなり、艱難はますます深まりました。
おぜき重太郎のコメント:この話から学べることは、「逆境にあっても感謝の気持ちを忘れずに思いやりを持ち、目指す姿を諦めず、希望を持って努力を続けることの大切さ」です。状況はすぐに劇的に改善するわけではありません。それでも、投げやりになってしまえば、すべてが終わってしまいます。尊徳先生は、草鞋を作って売るという小さな努力を積み重ね、家族を思いやる心も忘れませんでした。人は希望を失い、人としてのやさしさを捨ててしまってはいけない。この教えは、現代にも通じる普遍的な真理です。どんなに苦しくても、一歩一歩前に進むことが、未来を切り開く力になるのです。
(議会レポート2025年7月号(広域版)より 執筆者:おぜき重太郎)

