“おひとりさま”が安心して暮らせる社会を目指して①    

~“おひとりさま”が年々すごい勢いで増えています~

 2019年に厚生労働省が行った国民生活基礎調査によると、「65歳以上の者がいる世帯」のうち、「単独世帯」は736万9,000世帯でした。過去のデータを見ても、1989年は159万2,000世帯、2001年は317万9,000世帯ですから、高齢化が進むだけでなく、いわゆる独居老人がものすごい勢いで増えていることが分かります。
そのような中、一般的に同居する人がいない状態を指す“おひとりさま*”という言葉をよく耳にします。
 今回は、そういった“おひとりさま”の高齢者の方の課題について、重太郎が日頃からお世話になっている司法書士の青木先生のご意見を共有したいと思います。
教えてくれたのは…青木 豊先生:町田市内で青木司法書士事務所を開所しています。地図を取り扱う会社でソフト開発していたものの、司法書士試験合格を機に周囲の反対を押し切り?司法の世界へ転職。限りなく司法書士らしくない司法書士さんです。お気軽にご相談ください。
青木豊先生の写真と青木司法書士事務所のHPにつながるQRコードです。

~ひとりになって、まず困ることは~

 “おひとりさま”と一言で言っても、自ら選ばれた方、あるいは身内が遠方にいて、周りに迷惑をかけたくないと思っている方、あるいは意図せず病気や認知症になってしまった方などケースは異なりますが、いずれにしても共通する課題があるようです。
青木豊先生:単身生活を満喫されているご高齢の方も多くいらっしゃると思いますが、最初に困るのは病気になった時です。多くの病院では、(認知症ではなくても)高齢者ご自身での入院手続きを原則的に認めていません。介護施設に入所している方でも施設職員には法的権限がないため入院手続きは行えません。数年に一回程度であれば遠方の親族に来てもらうこともできますが、頻繁に入院するようになると現実的ではありません。私の実母も直近2年間で4回緊急入院(ねんざ、食あたり、誤嚥性肺炎)しており、その都度、私が仕事を休んで駆けつけました。私は自営業者なのでなんとかなりますが、子供が夫婦共働きの会社員だったらさらに大変なのではないでしょうか?
 青木先生がおっしゃっているのは身元保証の問題です。一般的に“おひとりさま”の「身寄り問題」には、①身元保証、②生活支援、③死後事務の3つが考えられるようです。

~困る“身元保証” 問題~民間の高齢者サポートサービスもありますが、トラブルになるケースも

 青木先生が指摘されている、高齢者が入院する際に発生する身元保証の問題は、入院だけでなく介護施設に入所する時や、新しい住居を借りる際にも発生しうる問題です。これを解決するために民間には様々な高齢者サポートサービスが数多くあります。中には身元保証をサービスとしているところもあるので、こういったサービスを使うというのは一つの手段です。
 しかしながら、高額な預託金や利用料を請求をされた、不要なサービスが契約に盛り込まれている、契約したサービスが適切に提供されない、など国民生活センターに相談が寄せられるケースもあるようなので注意が必要です。

消費者庁の案内

青木豊先生:(法律の専門家にお願いする場合)判断能力がある間もサポートしてもらいたい場合は「見守り契約」「財産管理契約」などの契約を締結する必要があります。亡くなった後の遺産整理もお願いしたい場合は「死後事務委任契約」も必要です。
これらの契約は、弁護士・税理士などの専門家と月額払いの顧問契約を締結するようなイメージです。お亡くなりになるまでの間、毎月数万円の報酬を支払うことになりますので、経済的負担がそれなりに大きい制度です。
(藤森克彦 月刊 J-LIS 「おひとり様」が安心して老後や死を迎えられる社会 2020年10月号
https://www.mizuho-rt.co.jp/publication/contribution/2020/j-lis2010.html)

~“おひとりさま”が安心して医療や介護を受けられる仕組みをつくっていくことが大切~

 厚生労働省の通知では、「身元保証人等がいないことのみを理由として医療機関において入院を拒否すること」は医師法に抵触するとの見解を示しています。しかし、現実にはその方が亡くなった後の負担を考え、身元保証を求めてしまう現状があるのだと思います。
重太郎:今回の調査では、高齢者サポートサービスの業界のあり方や“おひとりさま”の老後を支えるために必要な法整備など、さまざまな課題があることが分かりました。
次回は、実際に高齢者の相談を受けている高齢者支援センターや町田市の高齢者福祉課の認識を伺ってみたいと思います。
(会報2022年9月号より 執筆者:おぜき重太郎)